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「ミキの顔、お化けみたいになっちゃった…」

公開日: : 鬱・胸糞 ,

星井美希

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:15:02.55 ID:W/ZtT7RRO
「ミキ…」

もう3ヶ月ほど経つだろうか?

スタジオから事務所に向かうタクシーが玉突き事故に巻き込まれ、激しく炎上した

運転手は即死だったが、美希はタクシーから這い出た

上半身を炎に包まれながら

9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:17:06.56 ID:W/ZtT7RRO
病室の無機質なベッドに腰掛けた美希は、無表情で俯いた

いや、ひょっとしたらなにかしらの表情を作ろうとしたのかもしれない

しかし、それすらも分からないほど美希の顔は…

焼けただれていた…
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:19:37.50 ID:W/ZtT7RRO
「みんな元気?」

「あぁ、元気だ。みんな美希のこと心配してる」

「そう…」

「お見舞いに」

「イヤ!!」

…だろうな、やっぱり
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:24:03.49 ID:W/ZtT7RRO
「こんな顔、見せられない…」

「ミキ…」

ほとんど全て燃えてしまった髪の毛

左の瞼は閉じられ、二度と開くことはない
唇も、鼻も、耳も、以前と同じままのパーツは何一つ無かった
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:27:32.28 ID:W/ZtT7RRO
「ホントはハニーにだって見せたく無かったの…」

「あぁ…」

「でもね、ハニーには見せなきゃダメだって思ったから」

「どういうことだ?」

顔を上げた美希が、残された右目で俺を見つめた
顔を背けたい衝動を何とかこらえた

正視するにはあまりにも辛すぎたから…
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:32:04.62 ID:W/ZtT7RRO
「ミキ、ハニーのことが大好きだから」

「…あぁ」

「だから、見せなきゃダメなの!」

「そうか…」

「ハニーなら…ちゃんとミキの内面を見てくれるよね?」

その言い方に、過去の美希からは想像もできない”卑屈さ”を感じた
縋るような、媚びるような
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:35:31.55 ID:W/ZtT7RRO
「俺は…」

「やっぱり…こんな顔じゃダメ…かな?」

「いや、そんなことは…」

もともと恋愛感情など無かった

と言えば良かったのだろうか?
確かにそれは事実だった

しかし…
俺は口には出せなかった
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:40:37.75 ID:W/ZtT7RRO
「ミキね、小さい頃から、可愛い可愛い、って言われてきたの」

「…」

「もう、誰も言ってくれないよね…」

「きっと…」

きっと誰かが

そう言いかけて、口を閉じた

それは、”俺以外の誰か”というメッセージに他ならないから
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:44:51.98 ID:W/ZtT7RRO
「ちょっと…トイレに行ってくる」

「うん」

病室から逃げ出したくて、嘘をついた

しかし、その罰はすぐに与えられた

「美希の…お父さん?」

「…あぁ。ちょっと良いかね?」

廊下はまだ明るかった
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:50:12.15 ID:W/ZtT7RRO
「タバコ、吸うかね?」

「いえ。吸ってらしたんですか?」

「3ヶ月ほど前からね」

「そう…ですか」

喫煙スペースにタバコの煙が広がる

逃げ出したい気持ちは消えない
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:52:58.85 ID:W/ZtT7RRO
「可哀想と思ったかね?」

「はい?」

「娘が、だよ」

「…すみません」

肯定の意を含んだ謝罪
罪悪感が胸を刺す
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/02(木) 23:57:09.18 ID:W/ZtT7RRO
「事務所のことを責めるつもりはない。むしろ君らも犠牲者側だ」

「…はい」

「あの子は…美希は、太陽のような子だった」

「…はい」

過去形で語っているのは意図的なのか、それとも無意識なのか、俺には分からなかった
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:00:45.23 ID:10/xpDYiO
「自慢の娘だったよ」

「…でしょうね」

「君に好意を寄せているようだね」

「えっ?」

いきなりの話題転換に驚いたが、あやふやな返答は許されそうになかった

「…えぇ、知っていました」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:03:20.14 ID:10/xpDYiO
「美希のこと、可哀想と思うんだね?」

「…はい」

「なら、君が幸せにしてやってくれよ」

「それは…」

徐々に荒くなっていく口調
しかし、俺は耐えるしかなかった
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:07:20.98 ID:10/xpDYiO
「できないのかい?なぜだ?」

「お父さん、落ち着いて下さい」

「あんな顔になってしまったからか!」

「いえ、それは…」

このとき何を言えば許されたのだろう?

そうです

とでも言えば良かったのか?
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:12:08.10 ID:10/xpDYiO
「…取り乱してしまった。すまない」

「いえ、大丈夫です…」

「正直に言って欲しい。美希が元のままだったら、君は美希を愛せたかね?」

「…わかりません。本当です!」

「これから美希を愛することは?」

「それも…わかりません」


68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:14:29.80 ID:10/xpDYiO
「私が君の立場なら、同じことを言うと思う」

「…」

「君の気持ちは、わかっているつもりだ」

「…はい」


72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:18:24.96 ID:10/xpDYiO
「美希は、私たち家族が幸せにする」

「お父さん…」

「君を責める気は毛頭ない。本当だ」

「だけど…」

「何かね?」

「それが美希にとって幸せなことなんでしょうか?」


74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:21:45.62 ID:10/xpDYiO
「堂々巡りだよ。私は『なら君が幸せにしてやってくれ』と返すだけだ」

「はい…」

「できないのだろう?」

「…」

何も言えなかったわけじゃない
何も言わなかっただけだ

例え卑怯者と罵られようとも…
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:25:04.09 ID:10/xpDYiO
「このまま帰りなさい。そしてもう来ないでくれ」

「もう会わせて頂けないんですか?」

「会ってどうするのかね?」

「それは…」

病室で見た美希の顔を思い浮かべた
何を思ったかは…

言いたくない

79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:29:07.37 ID:10/xpDYiO
「私ももう君と会うことは無いだろう」

「…はい」

「では、失礼する」

「美希に…よろしくお伝え下さい」

形式的なだけのその言葉に対する返事は、もう返ってこなかった
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:35:29.80 ID:10/xpDYiO
その後、美希がどうなったかは分からない
どこかに引っ越したという噂も聞いたが、確かめる気は起こらなかった

繰り返される自問自答

―俺は外見でしか人を愛せない人間なのか?

―いや、あの顔は誰だって無理だ


―誰かのことはどうでもいい、お前はどうなんだ?


82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 00:38:20.11 ID:10/xpDYiO
俺は…俺は…

誰か教えて欲しい
俺はどうすれば良かったのか
美希自らが”お化けみたい”と言ったその顔を、撫でてやれば良かったのか?

そして、誰か答えてほしい


あなたなら、愛せますか?



お し ま い


145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 01:58:44.93 ID:10/xpDYiO
ミキはいま、どこにいるのかな?

遠い所へ引っ越したのは知ってる
そこがどこなのかも聞いた

でも、覚えてないの
ハニーがいなってことには変わりないから

146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:01:48.14 ID:10/xpDYiO
森に囲まれた小さなおウチ

このおウチを買うためにパパがずいぶん無理をしたってことも知ってる

部屋の窓から見える空は、前の場所で見たよりもずっと青い

でも、それだけなの

148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:06:13.82 ID:10/xpDYiO
気がつくと、またあの曲を口ずさんでた

大好きハニー イチゴみたいに 純情なの
ずっと見てて 絶対よ!

ミキはまだ、純情なのかなぁ?

「なんでミキなの?」

って、何回も何回も思っちゃったけど…

まだイチゴみたいに純情なのかなぁ?

151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:09:19.39 ID:10/xpDYiO
事務所のみんなには引っ越し先を教えなかったって、パパが言ってた
だから、手紙なんて来るハズない

前の携帯も解約させられたから、メールも来るハズない

自分から手紙を送る気には、どうしてもなれなかった

なのに待ってる
勝手だよね、ミキ

153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:13:34.79 ID:10/xpDYiO
夏はすぐそこまで来ていて、いまは梅雨のジメジメをやり過ごしてるところ

去年までと違うのは…

今年は、新しい水着のコトなんて考えなくてもいい、ってところかな?

こんな身体だもん、ミキ

157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:16:56.84 ID:10/xpDYiO
あーあ

イヤだなぁ

どんどん卑屈になっていくの

前のミキがどんな風だったか、もう思い出せなくなっちゃったなぁ



158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:19:47.78 ID:10/xpDYiO
何となくラジオを着けてみた

そこからは、聞いたことのある声が流れてきたの

千早さん、新曲出したんだね

おめでとうございます、なの



162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:23:37.06 ID:10/xpDYiO
…いいなぁ

ミキも、もっと歌いたかったなぁ

もっともっと踊りたかったなぁ

…曲が終わる前にラジオ消しちゃった

ミキ、やっぱり卑屈になってるのかなぁ?

163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:27:06.84 ID:10/xpDYiO
教えてハニー 未来は何色?

口ずさみながら想像してみたけど、明るい色は思い浮かばなかったの

本物のハニーなら、何て言うかな?
今度はちゃんと、ミキの顔見てくれるかな?

あのとき我慢してたの知ってるんだよ?

166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:30:13.55 ID:10/xpDYiO
外で車の音がした

ママが出かけたみたい
夕飯の買い出しかな?

車の音が消えるのを待って、ママの部屋に忍び込んだの

えっと…
どこかなぁ?

あ!あった!
ママのお化粧道具!

169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:34:04.04 ID:10/xpDYiO
鏡を見るのは久しぶりなの

うーん…
ママ、口紅の色濃すぎなの!

もっとミキに似合うの持っといてほしいの!

火傷のせいで上唇が引きつってるから、塗りにくいなぁ

172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:38:34.65 ID:10/xpDYiO
できたの!

アハッ

ミキ、やっぱりお化けみたいなの!

でもまぁ、いっかぁ

そうだ!
ついでに、アヒルの練習もしとこっかなぁ?

173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:41:39.05 ID:10/xpDYiO
いいことを 思いついたの 白いドレスを 着ている私を
早くねぇ 見たいでしょ?

ドレスじゃなくて白いワンピースだけど、仕方ないよね?

カーテンは…
開けとくの

空が見えるように

174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:44:08.18 ID:10/xpDYiO
一枚だけ持ってたハニーの写真を抱きしめて、ベッドに腰掛けたの

ごめんね、ハニー
こんな身体に抱きしめられたくないよね?

…っと

ミキ、また卑屈になってたの!

176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:47:43.50 ID:10/xpDYiO
大好きハニー 未来は二人

白いワンピースが、少しずつ赤く染まってる

ママ、ごめんなさいなの
洗濯しても落ちないよね、これじゃ

できたら、ミキと一緒に燃やしてほしいな
この写真も、ね

179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:50:09.83 ID:10/xpDYiO
シーツも赤くなり始めちゃったの

パパ、ごめんなさいなの
もう使えないよね、このベッド

できたら、ここに置いといてほしいの

ミキのステージとして

183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 02:55:42.80 ID:10/xpDYiO
カランカランって 鳴らしたいの

…ホントに聞こえてきちゃったの
カランカラン、って音

遠くのほうで、カランカラン、って

ハニーにも聞こえるよね?

うん!
ジューンブライドなの!

185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/03(金) 03:01:38.16 ID:10/xpDYiO
ミキ、ずっとハニーのこと見てるね?

あふぅ…

ミキ、もう眠くなってきちゃったの

だから寝ちゃう前に言うね?

ハニーもミキのこと

「ずっと見てて 絶対よ!」

なの!

…あぁ
空は青いよ、ハニー



お し ま い


元スレ
「ミキの顔、お化けみたいになっちゃった…」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328192102/


THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 2 -FIRST SEASON- 03 星井美希


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  • 新年あけましておめでとうございます。 本日1月5日から平常更新再開いたしますので、改めて今年もよろしくお願いします。
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